福音聖書神学校「礼拝と音楽」 No.31   

12、礼拝における奏楽

 

      1、奏楽とは何か

  オルガンの音が人間の音声に近い音であるということで、宗教改革以降、特別な位置が確立されていくが、聖書のなかに会衆と伴奏者を区別する根拠はない。むしろ会衆と同じ位置で会衆とともに賛美するのが奏楽者と言えよう。

 

      2、奏楽者の資格

信仰的な人・・ 熟練者ほど、信仰・霊性が伴奏に反映するのは当然である。讃美の 内容を理解し心から会衆と共に賛美するのが奏楽者だからである。

 

賜物のある人・ いろいろな奏楽のあり方があるが、会衆賛美に仕えるという精神も賜物である。

 

忠実な教会員・・伴奏の奉仕のためだけに教会に繋がっているという方が会衆賛美をリードしてはならない。

 

 謙遜な人・・・・音楽家気質は愛の精神に反するので注意する。

   

信頼できる人・・約束して決定したら、必ず実行する人であること。

 

 

    3、奏楽者の精神

       

a、十分な練習をする謙虚さ、急に指名されても奉仕する謙虚さ

 (ただし、指名する音楽指導者や牧師は奏楽者の能力への理解が必要)

b、ある時は会衆に従い、ある時は会衆を導き、ある時は会衆と競う。

    (聖会・礼拝・伝道会・男性が多い時、青年が多い時などの区別必要)

c、しかし、会衆全体の霊的流れをつかむときに全ては解決していく。

 (会衆の声や感情の理解だけでなく、神の御心を考え考え演奏する。)

 

    4、前奏について

        

 前奏によって、その礼拝の目指すものを表現することができる。前奏は合図であるが、ファンファーレなのか、それとも黙想支援なのか。礼拝がどこに進むかを規定していく働きをする。リタジーを大切にする教会では、前奏の最初の1音目を大切にする。つまり沈黙の中での一音目である。ただ日本の教会は沈黙を保ち得るカテドラルではない。ただ私たちのような自由教会であっても心がけるべきは奏楽のスピード感は日常生活からかけ離れたものでなければならない。

 

       5、奏楽者の技術

  • オルガン中心に礼拝を導く教会である場合は、教会音楽にふさわしい指使いを身につける必要がある。なぜならオルガンは指を離すと音が切れてしまうので、音を続ける練習がどうしても必要だからである。またオルガンはリズム楽器ではないので、会衆をリードするだけの強い音を出す工夫が必要である。しかし強すぎると会衆賛美の声を消してしまう。音が続くオルガンの音と音が続く人の声はどうしても競合してしまうという難しい領域がある。

 

  • ピアノ中心に礼拝を導く教会である場合は、ペダルの用い方の技術を身につけておく必要がある。ペダルは会衆をリードするための効果的な道具である。ペダルは伸ばす技術よりも切る技術で会衆をリードできるように思う。

 

  • 場にあった奏法を身につける。結局、奏楽は場所に規定されていくものである。会堂の広さ、PAシステムとの関係にも注意していく必要がある。

 

  • 会衆にあった奏法を身につける。未熟な会衆の現実を認めつつ、合わせていく面も必要とされるし、また会衆の倍音効果、男性女性の割合で響いていない音域を耳に聞き分けて即興演奏することも目標としていく。

 

  • 楽器にあった奏法を身につける。あなたの教会はリードオルガンか、パイプオルガンかデジタルコンピューターオルガンか、ピアノか、ギターか、コンピューターか。

 

     6、他の奏楽の可能性

  時代を経て、今やオルガン奏者だけが奏楽者ではなくなってきた。たとえばある教会では、巧みな即興によるピアノ奏楽がなされている。また、ある教会ではあらゆる楽器を動員して、詩篇150篇的な賛美を再現しようとしている。現代ではPAも賛美者チームの重要な位置をしめる。

 

 

リードオルガンの場合

  リードオルガンは、素朴な笛の音が魅力である。足踏み方式で踏み方で微妙な音の表現もできる。外国製品では、鍵盤が平行に移動して、移調が自由自在にできる機種もある。ただ日本では、最近は日本ではほとんど生産されていないで、高価な楽器となっているし、リードオルガン演奏用の奏楽の楽譜も少ない。この素朴な音色をPAの助けで増幅して、非常に効果的に用いている教会もある。大中寅二が霊南坂教会で長い間、リード奏楽を死守したことは有名である。ただ演奏の仕方として我々の声に馴染んで引っ張ってくれるが、会衆にとけ込み過ぎて、リードし にくい面がある。であるから、会衆の音域を避けて、また巧みにリズムに注意して導く技術が必要なように思われる。

 

デジタルコンピューターオルガン

    割合安価でパイプオルガンに近い音を再現できるという意味で注目に値する。パイ プオルガンは音量制限などにも限界があるが、デジタルオルガンの場合は自由自在である。伝統的なオルガン製作の企業が、過去からの特徴的な音を音源化し、その音源を用いて盛んに販売している。

 

パイプオルガン

 リタジーを重んずる教会のシンボル的な楽器がやはりパイプオルガンである。パイプオルガンを購入できないので、リードオルガンを使用したり、デジタルオルガンを使用してきた。しかし、パイプオルガン設置の場合は会堂建築や会堂全体の音響から備えないといけない。それだけでなく、パイプオルガン奏者を備えないといけない。しかしクリスチャンの少ない日本の教会はパイプオルガン奏者を獲得することも困難ことである。ノンクリスチャン奏者に来て頂いたり、今の奏者の次がいないので困っている教会もある。

 

ピアノ

   過去と現在と未来をつなぐ伴奏楽器としてピアノを推薦したい。21世紀日本の現状を考える上で、適用力のある伴奏楽器はやはりピアノであろう。ただピアノで奏楽する場合、適切な楽譜がない。であるからある程度、ピアノで伴奏するための形が必要となってくる。MBにおいてはアメリカ人の宣教師夫人の奏法を体験的に学び、それが継承されてきた。最近は便利な伴奏の形を提供してくれているものがネットから配信されている。「hymnal.net」を推薦する。https://www.hymnal.net/en/homeピアノは会衆賛美をリードすることができ、会衆賛美に仕えることもできる。またピアノを中心に様々な楽器を添えていくことで、会衆賛美に幅が出てくる。

 

コンピューターミュージック

   本来、伴奏は、会衆の歌に合わせたものであるが、会衆が奏楽に合わせるということもできる時代になっている。なぜなら、CCMの特徴として正確なリズムで賛美するという傾向が出てきているからである。日本人がカラオケを歌うのも伴奏者が歌い手に合わせているのでなく、歌い手が伴奏に合わせて歌っている。それで、賛美を最初からプログラムに組み込んで、コンピューターの支援で賛美するということが可能になっている。教会の奏楽部門で欠けたるところをコンピューターの力で支援することも可能である。つまりオーケストラ、バンド等をバックに賛美するという工夫も十分できる。