福音唱歌をどう位置づけるか(2)

 日本では福音唱歌(ゴスペルソング)は昔からの讃美歌と同じもののように考えられていますが、そうではありません。福音唱歌はヨーロッパ生まれの讃美歌ではなく、アメリカ生まれの福音唱歌、なのです。それも大衆性を帯びていると讃美歌の群からは批判されて来ました。しかしアメリカにおいて、福音派が拡大していくなかで、福音唱歌はある程度の地位を獲得していくのです。

 福音唱歌には福音唱歌の本来の「場」があります。その「場」とは、当然、日曜礼拝ですが、その他には、リバイバル集会、宣教大会、伝道集会、大挙伝道、路傍伝道、キャンプ集会等です。福音主義が伝道を盛んに行なう場において歌われたのです。ですから当然のように、その曲は伝道的なわけです。歌い方としては、前半部分は、ソングリーダーのような方が、リズムを曖昧にした、当時の霊的な歌い方で自分の感情を放出するように歌います。そして「おりかえし」になると、その歌い手は賛美リーダーになり、「じやあみなさんで歌いましょう」というふうに、全体でコーラス(おりかえし)を歌うことになるのです。その場の音楽のレベルに応じて、ある集会の場合はすでに、自由にコーラス部分から4重唱的に歌うわけです。音が全然違う人がいたとしても、多人数の中で倍音が生じ、不思議な音の世界が広がります。これが彼らの賛美の「場」でありました。ただ福音唱歌を歌う場合のポイントは、ソングリーダーだけでなく、ピアノ伴奏者でした。どのような即興伴奏ができるか、でその場の盛り上がりが違ってくるわけです。

 しかし日本に福音唱歌が入ってくると、その歌い方は讃美歌的になり、リードオルガン伴奏になり、音楽的な要求がなされ、自由度が減るということが起こってきました。日本語の問題もあり、いたしかたないのですが、本場の福音唱歌とは全然違うものとなってしまったわけです。ただ、アメリカにおいても福音唱歌が向上してくなかで、様々な流れが生じ、多様な福音唱歌が生じていったのも事実です。